合成生物学の衝撃

合成生物学の衝撃コンピュータを使ってDNAを設計し、この世には存在しない生物を作り出す。
それが「合成生物学」である。
SFのような話だが、現実に合成生物は作られている。

まだ、最低限の機能しか持たない小さな生物しか作れないが、その可能性はとても大きいと共に、危険も大きい。
この本の中でも、冷戦時代の旧ソ連による細菌兵器の研究や、現代アメリカでは軍事研究機関DARPAが合成生物学の最大のスポンサーになっていることが語られる。
細菌兵器からの防衛を研究するためには、予想される敵の細菌兵器を開発する必要があり、それはそのまま細菌兵器としても利用できる。
DARPAの関係者がいくら研究成果の平和利用や、研究の透明性を主張しても、この根本的な原理に対する不安はなくならない。

ヒトゲノム計画で、人間の遺伝子は全て解明された。
しかし、それぞれの遺伝子の機能はほとんど分かっていない。
遺伝子の機能を特定するには、その遺伝子を使えないようにして生物の振る舞いを観察する方法が使われるが、この方法はとても時間がかかる。
それならば、遺伝子をデザインして生物を作ったほうが早い。
これが「合成生物学」のもとになった発想である。
生物を最初からデザインすることで、生物に最低限必要な機能を特定することもできる。
生物とは何かを、遺伝子レベルで確定できる可能性が出てきた。

遺伝子を編集する装置の価格が下がったことなどで、合成生物学の分野は爆発的に発展するかもしれない。
遠くない未来、地球上には人間がデザインした生物の方が多く存在する時代が来るかもしれない。
このようなテクノロジーを手にした時、どのような倫理を持って、判断を下したら良いのだろう。

「生物界を理解可能なものにするために、生物を”再建”することを選択した。こうして合成生物学に行き着いたんだ。1999年のことだった」
アイディアを実行に移すための最適な場所を求め、エンディは方々に自分の考えを発信し始めた。

「もし防衛予算を使えば、その分、爆弾やミサイルへの投資を少なくできる。人道主義的な目的で技術を開発することによって。もし開発の目的が良いことだと信じているなら、どんな方法でもそれを開発すようとするものだ」

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