犯人に告ぐ

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)劇場型犯罪には劇場型捜査で対抗する!
警察上層部の無茶な発想で、連続児童殺人犯の捜査責任者巻島が、TV番組に出演し、犯人に呼びかける。
コメディではなく、どちらかというと重めのエンターテーメントである。

主人公の刑事巻島は、6年前の誘拐事件捜査の失敗で、誘拐された子供が殺されてしまった罪を心に背負い込み、常に自虐的である。
それもあって、マスコミや世間を敵にする恐れのある公開捜査の担当に使命されても抵抗しない。
予想通り世間のバッシングを受けるようになっても、全く動じた様子がない。
贖罪のつもりがあるとも思われるのだが、内面描写が少なく、淡々と捜査を進めているように見える。
そこがミステリアスで、魅力的である。

犯人との駆け引きよりも、内輪の敵との闘いに多くのページが割かれている。
犯人側からの情報は手紙だけに絞っている関係で、犯人とのやりとりが地味になっているので仕方ない部分もある。
しかし、スパイの動機は、あまりにスケールが小さい。

巻島の懐刀として引き抜かれた津田長が、いい味を出している。
巻島では気のまわらない関係者の心情フォローを担当し、巻島が唯一泣き言を言える相手として、身近に置きたかった人物である。
捜査に加わってくれと言う巻島の依頼に対する答えが、
「分かりました。仕えましょう」
である。
時代劇か!

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