チャイルド44

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)スターリン体制下のソ連。
社会主義国家では、犯罪者の存在は認められなかった。
子供ばかりを狙う連続殺人鬼を負う主人公は、国家に対する反逆者者として扱われる。
何とも重く、辛い探偵小説である。

この小説において、怖いのは殺人鬼ではない。
恐ろしいのは全体主義国家であり、そこに住む人々の心の闇である。
国家に対する反逆の疑いで、いつ告発されても不思議はない。
お互いに対する疑心暗鬼の中、人々は自分の命にしがみついている。
上巻は、ミステリーというより、「1984」のようなデストピア小説である。

そして、主人公は、国家の命じるまま、無罪とわかっていても、思想犯を取り締まる側にいる。
部下の罠にはまり、妻を告発出来なかったことで、主人公は地方にとばされる。
すべてを失って、自分の目的を得るために、連続殺人鬼の捜査を始める。
上巻の最後にして、やっと捜査が始まる。

前半あまりに暗いので、途中で投げだそうかと思ったが、最後まで読んで良かった。
この小説は、家族と夫婦の崩壊と再生の物語である。
最後はなかなか感動的だ。

ちなみに「チャイルド44」の「44」は、犠牲者の数である。

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