赤ひげ診療譚

赤ひげ診療譚 (新潮文庫)黒沢明の映画を観て、今更ながら「赤ひげ」を読んでみた。
私の持っていた山本周五郎のイメージとは違った、シリアスな小説だった。

舞台は江戸。
貧乏人ばかりを相手にする療養所に、半ば強制的に研修医として入れられた主人公は、療養所を運営する「赤ひげ」に反発する。
しかし、乱暴な言葉使いだが、強靭な精神力と病人への分け隔てない愛情を持つ「赤ひげ」に、主人公はいつしか惹かれていく。

私の持つ山本周五郎のイメージは、ユーモラスでクール、現代でも通用するハードボイルドな作家だった。
しかし、この作品では、貧乏のどん底で苦しむ庶民の姿が正面から描かれている。
貧乏に苦しみ一家心中を計り、子供だけ死んでしまう一家。
逆に、子供を食い物にして、岡場所に売ってしまう母親。
愛人を繋ぎ止めるために、実の娘を嫁に与える母親など、救いようの無い世界が多く扱われた連作短編種である。
このような中にあって、「赤ひげ」は人間を悪くは言わない。
全て、無知と貧乏が人間を歪ませたと考えている。

江戸時代は、半年働けば半年食べていける、お気楽な時代だと思っていたが、そうでもないらしい。
現代の日本で生活していると、このレベルの貧困は実感出来ない。

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