グラーグ57

グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)昨年、ミステリー界で高い評価を得た「チャイルド44」の続編である。
前作は、ミステリーというよりデストピア小説であり、最終的には恋愛小説だった。
まさか、あの話の続きを書くとは・・・
今回もミステリーではなく冒険小説もしくは歴史小説だった。

全体主義国家の統制下、国家として殺人を認めない世界で、殺人犯を追う孤独な戦いを描いたのが前作「チャイルド44」だった。

本作では、秘密警察からソ連唯一の殺人課刑事となった主人公と妻、そして2人の養女の物語である。
体制が変わったとはいえ、秘密警察と密告による国民の傷は簡単には癒えなかった。
そんな中、旧体制の役人をターゲットにした連続殺人が発生する。
主人公は捜査に乗り出すが、自分もまた狙われていることに気づく。

密告や虐待、過酷な収容所や拷問など、相変わらず気が滅入る描写が続く。
しかし、上巻を読み終わる頃には、そんな風景にも慣れてしまい、主人公が収容所から脱出する姿が、インディージョーンズのような冒険活劇に思えてくる。

後半は、ブタペスト独立のための市民とソ連兵による市街戦になる。
面白く読めるのだが、歴史小説を読んでいるような感じである。
作者は何を描きたかったのか、疑問に思えてくる。
きっと、憎しみと家族の絆あたりだろうが、ネタが多くて、ぼやけてしまっている。

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