オルタード・カーボン

オルタード・カーボン(上)懐かしいサイバーパンクのティスト。
それにゼロ年代の風潮をプラスしたハードボイルド小説である。
テクノロジーの進化が人間存在の意味を問い直す、というテーマがSFらしくて嬉しい。

人間の記憶と精神を小さなチップに詰め込めるようになった未来。
人は身体が古くなれば、自由に新しい身体に乗り換えられるようになった。
しかし、新しい誰もが新しい身体を買えるわかではなく、身体を買えない貧乏人は、チップの中で塩漬けになる。
また、何度も人生を生き直す精神力がない人も多い。

軍の特殊部隊にいた主人公は、強盗に失敗し、数百年間は人間の身体に復帰出来ない刑に服していた。
彼を新しい身体にダウンロードさせたのは、自分が自殺したのか、殺されたのか、捜査して欲しいという大富豪だった。
金持ちは毎日バックアップを取っているので、自殺しても意味がない。
だが、生き返ったバックアップには、前回のバックアップから死んだ時までの記憶がない。

主人公は新しい身体に戸惑ながらも、荒廃した未来のサンフランシスコで、事件の謎を解明していく。
最後には、巨大な悪と戦うことになる。

テクノロジーによって、身体と記憶(魂)が分離されているところが面白い。
お金が足りなかったり、他人の意思により、他人の身体にダウンロードされ、戸惑う人々とその家族の姿が描かれている。
姿を失った時に、自分にとって、周囲の人間にとって、自分は自分なのか?
という哲学的とも言えるテーマを扱っている。

でも、物語はチャンドラーを想わせるハードボイルドである。

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