新世界より

新世界より(上) (講談社文庫)すごいSFだった。
ホラー作家としては評価していなかったが、これほどのSFを書けるとは、驚きである。
全ての人間が超能力が使えるようになった未来での、恐るべきデストピアが丁寧に描かれている。

「SPEC」の革命でスペックホルダー側が勝利した後の世界、または「禁断の惑星」の別回答である。

全ての人間が無限の超能力を持った場合、どのような状況が発生し、どのように生き残るか、その回答として、論理的に世界が構築されている。
最初こそ、のどかな日本社会での青春小説のようだが、徐々に世界の恐ろしさが暴かれて行く。
巨大な力とはアンバランスな、人間の弱さと凶暴さをカバーするためのしくみなのだが、非人間的であり悲しい。

冒険小説としても、とても楽しい。
バケネズミの戦争や、異常な進化を遂げた生物たちの棲む異世界の風景も魅力的である。

懐かしいSFのテーマを、現代風にアレンジし、見事に再構築している。
こういうちゃんとしたSFこそ映像化して欲しいが、安易な「愛」で終わらせないで欲しい。

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