進化しすぎた脳

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)この頃、脳の研究に興味がある。
行動分析学を調査していたところ、周辺分野として脳の研究にも接したが、常識と違う研究成果が多く、興味をそそられる。
fMRIなどの測定技術の進歩が、新しい研究を推進しているようだ。
大脳生理学系は専門ではなかったので、高校生の対談というスタイルである本書から読んでみることにした。

相手が高校生なので、専門用語を極力排し、分り易い説明になっている。
それでも、我々が一般に持っているイメージと、最新の脳研究の成果が大きく異なっていることに驚かされる。

理論も興味深いが、やはり臨床の事例が面白い。

動きを感知する場所でる5番目の視覚野が壊れると、動いているものが見えなくなる。
ボールが見えていても、転がりだすと見えなくなってしまう。

小さい時に脳に水がたまってしまう「水頭症」は、脳の成長が阻害される。
それでも多くの患者は正常であり、中にはIQが126の人もいた。
検査の結果、彼の脳は正常な人の10%しか脳が無かった。
本来、人間にはそんなに大きな脳は必要ない。

人間の見ている世界は視野の中心部分のごく狭い範囲しか色が見えない。
それ以外の部分は、脳が色を補っている。

脳波をモニターしながら脳の活動を調べると、先に「運動前野」という運動をプログラムすることろが動き始めて、それから1秒ほど経ってから「動かそう」という意識が現れる。
「動かそう」と脳が準備を初めてから、「動かそう」というクオリアが生まれる。
自由意志は、潜在意識の奴隷にすぎない。

脳は完全に覚えるのではなく、特徴を抽出している。
柔軟に利用するには、100%完璧な記憶には意味がない。
服や髪型が変わっただけでも、違う人間として認識してしまう。

脳は身体があるからこそ成長する。
そこがコンピュータとの大きな違いだという。
脳は身体に合わせて、柔軟に変化するのだ。
コンピュータも、今後そのような方面に進化するのかどうか、楽しみだ。

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