おそろし

おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)驚くべきことに、この小説は時代劇であるにも関わらず、モダンホラーだった。
あえて言うと、一番面白かったころのスティーブン・キングがここに居る。

ある事件で心を閉ざしたおちかは、江戸の袋物屋「三島屋」に引き取られる。
三島屋の主人である叔父の発案で、おちかは不思議な話の収拾をすることになる。
三島屋百物語の始まりである。

宮部みゆきの時代劇、特に商人の生活についての描写は見事である。
しかし、この本では、心霊現象の描き方がモダンである。
まさに、キングだ。

人を呼び込み、魂を喰らうお化け屋敷は、「シャイニング」のオーバールック・ホテルであり、自分で修復・拡張する姿は、「ローズレッド」である。
閉じ込められて家族の顔が蔵の入口から見える様子は「クリスティーン」だし、この世とあの世の間で商売を続ける謎の男は「IT」のピエロと重なる。

当然、普通に怪異譚としても楽しめるが、キングのファンには、夢のような一冊である。

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