システム関係の仕事をしていると「チェックリスト」の重要さは、身にしみて理解している。
そんな私が読んでも、この本は面白かった。
チェックリストを使った実務の事例が、読み物として面白く、感動的でさえあった。

まず、チェックリストについて、以下のような語られている。

誤解されがちだが、チェックリストはマニュアルではない。
高層ビルの建築用であれ、飛行機のトラブル解決用であれ、全ての手順を詳細に説明するものではない。
チェックリストは、熟練者を助けるためのシンプルで使いやすい道具なのだ。
素早く使えて、実用的で、用途を絞ってあるという特性こそが肝要だ。
だからこそ有効で、だからこそ何千人もの乗客の命を救えたのだ。

建築業界に近く、そして建築と違い目に見えないものを構築するソフトウェア業界において、チェックリストは更に重要である。
間違いがあっても目に見えないのだから、愚直にチェックするしかないのだ。

この本の良さは、著者の主張を裏付ける気の利いたエピソードである。
まずは、著者が手術でのチェック導入テストを行った後のアンケート結果である。

もちろん、全員が納得したわけではない。残りの２０％は、「チェックリストは時間がかかって使いづらく、手術をより安全にしてくれなかった」と思っているわけだ。
だが、私たちはアンケートにもう１つ質問を入れておいた。
「もしあなたが手術を受けるとしたら、その時にチェックリストを使って欲しいと思いますか」
９３％が「はい」と答えた。

次は、一時マスコミを賑わした、ハドソン川に不時着したエアバスA３０２の事故関係者へのインタビューである。
ヒーローに祭り上げられた機長は、自分自身の手柄ではなく、メンバー全員が冷静に、決められた手順を実行した結果だと主張していた。

全てが驚くほど円滑に行われた。サレンバーガー機長はこう語る。
「着水後、ジェフ・スカルズ副操縦士と私は顔を見合わせ、ほぼ同時に同じことを言った。『案外大したことなかったな』と」

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