ラブクラフト+数学+冷戦スパイというアイデアはとても魅力的だ。
しかし、シニカルなコメディは、元ネタを考えなければならないのでテンポが悪くなる。
エンターテーメントとしては、もう少しシンプルな方が良かった。

クトゥルフから世界を守る英国の秘密機関の話である。
ISO-9000を取得している秘密機関なので、書類仕事がやたら多く、経費の支出に細かい。
それはそれで面白いのだが、全体を通して、このような細かいギャグが多くて理解するのに時間がかかる。
オカルトと冷戦下の世界情勢と英国政府など、幅広い知識が要求されるコメディである。
嫌いな分野ではないのだが、あまりに回りくどくて読みにくい。

他の時空から魔物を召喚する時に、確率を収斂させるために観察者として生贄が必要である、といった面白いアイディアが随所に散りばめられている。
もう少し読み易くなれば、かなり楽しめる作品を書ける作家だと思う。

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