湊かなえの得意とするところは、日常に潜む「悪意」を描き出すことだと思う。
それは見事で、爽快でさえあるのだが、場合によっては「日常」が全面に出過ぎることがある。
すると、昼メロのようになってしまう。
本作はギリギリのところで、そのラインを回避した。
そして、読み終わった時に、構成の見事さが分かる小説だった。

この小説は、３つのパートからなり、それぞれ女性が主人公である。
３つの物語が、どう繋がっているのか、なかなか理解できない。
途中まで読むと、同じ和菓子屋が出てくるので、ひとつの街の話かもしれない、というのが薄っすらと分かってくる。

それぞれの女性が悩みを抱えているのだが、日常的な問題であり、殺人などの重大な犯罪に発展しそうもない。
いつもの湊かなえを期待していると、ちょっとダレてくる。
でも、そこで辞めてはいけない。
最後まで読めば、湊かなえの見事な手腕に驚かされる。
やはり才能のある作家だと再認識させられた。
しかも、今回は感動的でさえある。

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