小暮写真館

小暮写眞館(上) (講談社文庫)スティーヴン・キングと宮部みゆきはの共通点は、映画やドラマより、確実に原作が面白いところである。
この「小暮写眞館」もNHKでドラマ化されているのだが、私は先にドラマを観てしまった。
観てから読んだわけだが、やはり、原作が一枚上手だった。

花菱一家が越してきたのは、古い写真館「小暮写眞館」だった。
両親が雰囲気を気に入り、写真館の外観を変えないまま、そこで生活することになる。
すると、長男の英一の元に不思議な写真が届けられる。
あるはずのない所に女性の顔が写っている、いわゆる心霊写真である。
「小暮写眞館」で現像された写真だから、責任を取るように迫られ、英一は写真の謎を解くことになる。

本人の意志とは関係なく「心霊写真探偵」にされてしまった英一は、写真の謎を解く過程で、人間の難しさや悲しさに直面する。
そして、幼くして世を去った花菱家の長女にまつわる家族の苦悩に向き合い、乗り越えることになる。

作者本人も言っているように、殺人事件など起きない爽やかなミステリーである。
それでも人間に悪意がないわかではない。
ただ、愉快犯やサイコパスではなく、自分を守るためや、自分に余裕がないために、他人を傷つけてしまう、という人間の性として描かれている。

ドラマ版でも、主演の神木隆之介は、見事にハマっていたし、なかなか頑張っていたと思う。
ただ、色黒の元気娘「コゲパン」が出ていないのが納得出来ない。
ムードメーカーである彼女が出演すれば、もっと楽しい雰囲気になるはずなのに、残念である。

恋愛モノとしても小説の方が上手だったと思う。
お互いを撮影したインスタントカメラを持ちながら、決して現像しないというロマンチックなシーンが、ドラマ版にはなかったと思う。
ちょっと、記憶が曖昧だが・・・

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