珍しいディックの合作。
内容的には、ほぼディックのティストだった。
悪くはないのだが、書き飛ばした1作という感じがする。
ガニメデ人に支配された地球では、唯一黒人たちのグループが反抗していた。
そのリーダーであるテレパスを捕らえるため、元恋人のレポーターがアジトに向かうが・・・
出てくるガジェットがとてもディックらしい。
喋るタクシーを始め、最終兵器は幻覚発生装置である。
幻覚発生装置は、すべての人に分裂症のような幻覚を見せる。
その上、その幻覚は物理的に攻撃を仕掛ける。
幻覚は吸血鬼や狼男、ボーイスカウトなどなど。
幻覚同士の混戦が始まり、ガールスカウトをボーイスカウトがレイプするなど、どうしようもなく混沌としている。
是非映像化して欲しいが、ハリウッドの大作ではなく、「デリカテッセン」の監督辺りのイマジネーションが欲しい。
相変わらず世界が狭い。
ガニメデの最高司令官を騙して世界のリーダーになろうとするのが、アメリカの片田舎の地主だったりする。
世界が舞台のはずだが、町内で揉めている雰囲気である。
だからといって楽しめないわけではない。
エンターテイメントでもあり、節々に哲学的考察や、ニューサイエンス的なネタが仕込まれた怪作である。
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