歌うクジラ

歌うクジラ(上) (講談社文庫)村上龍によるSFである。
純文学側の人がたまにSFを書くと、感覚がズレていることが多いが、この作品はかなり直球ど真ん中な感じである。
社会問題や性犯罪がテーマの中心になっているのが村上龍らしい。

不老不死の遺伝子が発見された未来の日本。
移民の暴動の後、日本国内は不老不死となったトップのエリートから、性犯罪者の最下層まで徹底的に階層化された。
性犯罪者の子孫が隔離された新出島に住む15歳のアキラは、処刑された父親の遺言に従い、世界を変える秘密を抱えて日本の支配者の元に向かう。

設定や小説の構造は、懐かしいオールドタイプSFを踏襲しているように思える。
虐げられた少年が、仲間ととも王に挑む、と考えると神話にも近い構造である。

しかし、そこは村上龍。
現代日本の問題を元に、それが劇的に進行したデストピアを描いている。
移民の運用の失敗による階層化はあり得ると思うが、未成年への性犯罪がここまで一般化するのはどうかと思う。

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