ブラインドサイト

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫)ファースト・コンタクトテーマのSFだと思ったら、脳科学のハードSFだった。
地球人が初めて異星人による構造物を探検するのだが、そのメンバーがとても変わっている。
そして、最終的に問題にはるのは、知的生命体に意識が必要かという問題である。

地球を包囲した流星は、異星人の放った探査機だった。
その謎を解明するために、太陽系の果てにある異星人の本拠地に乗り込む。
メンバーは、吸血鬼の隊長、四重人格の言語学者、感覚器を機械化した生物学者、平和主義の軍人、脳の半分を失った主人公だった。

このメンバー構成は、コメディとしか思えない。
傑作SFコメディ「レッドドワーフ号」を思い出す。
ところが、この小説はハードSFなのである。
それも、宇宙物理学ではなく脳科学が中心になっている。

全体的に文章からイメージを思い浮かべるのが難しい小説だった。
特に風景の描写を理解するには、科学的素養が求められる。
SFらしいと言えるが、いささか疲れる。

主人公たちは異星人による構造物に辿り着き、内部を探検することになる。
異星人は人間の感覚を操作して、幻覚を作り出す。
調査に赴く雰囲気は、幽霊屋敷の探検である。
「2001年宇宙の旅」よりも、地獄にワープした宇宙船が帰ってきた「イベント・ホライゾン」に近い。
人間を探検に送り込む理由が、失敗して死んでも、脳さえ残っていれば再生出来るからだというのも酷い。

意識とは何か、知的生命体に意識が必要かが本当のテーマである。
作者は、最新の脳科学の知見を駆使してこの思考ゲームに挑んでいる。
とても挑戦的なSFである。

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