BORN TO RUN 走るために生まれた

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”長距離ランニングの友として有名な「BORN TO RUN」のオーディオブックを購入した。
15時間の長尺なので、フルマラソン3回分くらい楽しめる。
しかし、登場人物が多いし、話題があちこちに飛ぶ上に、スペイン語などの他言語の名称も混ざるので音声では辛い部分があった。
なので、改めて書籍で読み直した。

本書は「人間とは走る動物である」ことを証明するノンフィクションである。
ランニングによる故障に悩む著者は、素足で長距離を走る人類最速の民族「タラウマラ族」の謎を探るために、荒野を彷徨う。
そして、人類の頂点のウルトラマラソン大会に参加することになる。

本書は、次のようなテーマで構成されている。
・人間は走るように進化した理由とその本能が失われた理由
・ウルトラマラソンの歴史
・最高のウルトラマラソンランナー対最速の民族の対決

冒険小説のような探求と人類学的な考察、スポ根マンガ的なレースが代わる代わる登場し、楽しませてくれる。
この本を読むと、走りたくなることは間違いない。
私は裸足で走りたくなった。

タラウマラ族と文明世界最速ランナーの対決が2回あるのだが、登場するキャラクターが素晴らしい。
ウルトラマラソンをする人間には、まともな人間がいないような気がしてくる。
栄光もお金も縁のないこの世界では、走ることの楽しさが最高のモチベーションになっているクレイジーな人間が集まってくる。

特にそれぞれの大会を盛り上げる2人の魔女が気に入っている。
物静かなアニーとパーティキッズのジェンである。
静と動の対照的な2人だが、楽しいから気がついた時には長く走っていた、というのが共通している。
ウルトラマラソンは、若者と年寄り、男性と女性が対等に争える珍しいスポーツである。

アンがやっていたのはまさにそれだった。タラウマラ族を追いかけるのではなく、リスクのある絶妙な戦略に打って出て、タラウマラ族に追いかけさせる。結局のところ、勝つことへの執念が強いのはどちらかだ。捕食者か、獲物か? ライオンは負けてもまた別の日に狩りをすればいい。でも、レイヨウは一度しくじったら終わりだ。タラウマラ族を破るには、意志の力だけでは足りないと、アンにはわかっていた。必要なのは恐れだ。いったん先頭に立てば、小枝が折れる音がするたび、ゴールへと駆り立てられる。

ジェンは最後まで競い合いを演じているのでも、ナイキのモデルのように歯を食いしばって厳かに山頂を駆けているのでも、栄光をめざして悲痛な決意に顔をしかめてあえいでいるのでもない。彼女はひたすら・・・走っている。走り、そして笑っている。
だが、その笑顔は妙に心を打つ。そこから見て取れるのは、彼女が純粋に楽しんでいることだ。この地球上で何をするよりも走っていたい、そこよりもアパラチア山脈の荒野にあるこの幻のトレイルにいたいとばかりに。

さらに、ブランブル博士は驚愕の事実を発見する。すべての走る哺乳類が、一歩進み、一度呼吸するという同じサイクルにしばられていたのだ。彼とデイヴィッドが見るかぎり、例外は全世界にひとつだけだった。
あなただ。
(中略)
世界じゅうの毛皮に覆われた動物は、もっぱら呼吸によって涼を取り、体温調節システム全体が肺に託されている。汗腺が数百万もある人間は、進化の市場に現れた史上最高の空冷エンジンだ」

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