僕らは都市を愛していた

ぼくらは都市を愛していた (朝日文庫)神林長平を読んだのは、大学生の頃以来かもしれない。
当時台頭して来た新しい日本人SF作家の一人として、とてもハードなSFを書いていた印象があった。
今回新作を読んで、彼がハードなだけでなく、感傷的な作家でもあることを思い出した。

本書は2人の主人公の視点でストーリーが進行する。
ひとつは、謎の「情報震」により人類が蓄積した情報が失われた世界で、任務を全うしようとする日本情報軍の女性士官の活動である。
もうひとつは、腹部に特殊な神経を付加されたことにより、擬似テレパシーが使えるようになった公安捜査官たちによる殺人事件の捜査だ。
ふたつの物語は並行して進み、最後に交わることになる。

神林長平は、ハードSFな純文学だと思う。
使われている用語は、最新テクノロジーを感じさせるものが多く、SFファンには心地よい。
しかし、公安捜査官における過去の援交相手の女子高生の唇の色や匂いへのこだわりなど、純文学的な、それも私小説的な感触に近い表現も中心にある。

結局のところ、何が描きたかったのか、分かりそうで掴みきれなかった。
言葉の使い方こそSFだが、読後感としては幻想小説だった。

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