新・戦争論

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)佐藤優には少し前から興味はあったのだが、あまりに顔が怖いので、なんとなく避けていた。
池上彰との対談ならマイルドだろうと思い読んでみたら、当たり前だが、顔とは関係なく興味深い視点を持つ人だった。
歴史的観点の重要さ、それも普段あまり縁のない中央アジアやロシアの歴史の重要さを感じさせる本である。

日本は世界とズレている。
今の世界は「力」が軍事、政治、金融、産業、科学、情報に分散している。
国家においては、あらゆる「力」が総合的に必要な時代である。
しかし、日本は国家としてズレている。
その中にあって個人が、情報・分析力(インテリジェンス能力)に磨きをかけないと生きていけない。
このような危機感がこの対談の根底にある。

地球は危険に満ちており、現在は戦争前夜である。
イスラエルの無人機による暗殺、4割が外国兵のイスラム国、民間会社が行う新しい戦争という現実を元に、現在がいかに危険な状態であるかが語られる。

ダライ・ラマは中国から亡命したが、次のダライ・ラマが中国統治下のチベットで誕生すると、中国傀儡の仏教指導者になる恐れがある。
中国とバチカンは、中国国内におけるキリスト教のあり方について、激しく対立している。
イスラム国はキリスト教のように原罪を持たない故に危険である。
先進国の安全な地域から故郷の国の政治に介入する「遠隔地ナショナリズム」が新たな混乱を生み出している。
宗教と民族の問題として、このようなテーマが取り上げられている。

欧州の闇であるウクライナ内部断絶は、その原因に旧ソ連とドイツの対立がある。
そして、現代の問題として、EUが底辺労働者の供給元としてウクライナを必要としている事情がある。
スコットランド独立問題など、欧州で起こっている問題は、歴史の知識なくしては理解できない。

それ以外のテーマは以下の通り。
・「イスラム国」で中東大混乱
・日本人が気づかない朝鮮問題
・中国から尖閣を守る方法
・弱いオバマと分裂するアメリカ
・池上・佐藤流情報5か条

対談は話があちこちと飛ぶのでまとめにくい。
読んでいる時は面白いのだが、頭に残らないのが困ったものだ。

閣議決定について公明新聞(2014年7月2日付)は、安部総理が山口那津男公明党代表に「個別的、集団的かを問わず自衛のための武力行使は禁じられていないという考え方や、国連の集団安全保障措置など国際法上合法的な措置に憲法上の制約は及ばないという考え方を採用しな(い)」と明言したと書いています。これは公明党は従来の枠組みを越えて、自衛隊が海外に出動できないようにネジを締めた、という勝利宣言です。この2つのポイントは、外交のプロでないとわからない、しかし要の問題なのです。

(イスラエルの無人機は、)標的人物の顔写真を認識して、低空を飛んで、標的を発見すると、ピーンと五寸釘を飛ばして眉間に当てて、顔を綺麗なまま殺すのです。

佐藤
教育や訓練を受けていない人間が社会的に上昇するためには、とてもいい手段です。ヘイトスピーチなどその最たる例で、朝鮮学校のそばに行って大声でがなり立てていれば、新聞でも週刊誌でも扱ってくれて、顔も全国的に知られ、一部の人たちから、「きみ、よく頑張ったね」と声をかけられ、金も集まってくるわけですから。
池上
社会的に持たざるものの上昇の回路になる、ということですね。まさにヒトラーが擡頭したときのように。

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