劇場版サイコパス

【映画パンフレット】 劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス近未来の警察アクションアニメ「サイコパス」の最終章は劇場版だった。
この頃よくある方法だが、「サイコパス」に関しては成功したと思う。
設定は良いのだが脚本に無理があったテレビ版とは違い、劇場版よく出来たストーリーになっている。
世界に視点を移したことで、日本の異質な状況の意味が鮮明になったと言える。
戦闘シーンも派手になり、大画面向けである。

人間の色相判定により、事前に犯罪が予想出来る「シビュラシステム」によって管理された未来の東京が舞台である。
犯罪傾向は病気として扱われるため、犯罪者になる可能性のある潜在犯を見つけるのは、厚生省の管轄となっている。
主人公たちは、厚生省に所属する刑事である。
実際に犯罪者を逮捕する刑事である執行官には、潜在的犯罪者を利用している。
その執行官を管理する厚生省の役人である監視官と執行官で捜査を行う。

TV版のシーズン1では、シビュラシステムで判定出来ない免罪体質者の犯罪を通して、シビュラシステムの謎に迫る。
シーズン2では、シビュラシステムが認識さえ出来ない犯人が、厚生省とシビュラシステムに挑戦する。
劇場版では、シビュラシステムと保安ドローンの海外輸出を背景に、監視官の常森朱が、シーズン1で失踪し、テロリストのリーダーになった疑いのある元執行感の狡噛慎也を追う。

まず、その世界観に驚いた。
TV版では舞台は東京だけであり、海外の状況は全くわからない。
日本が鎖国しているようだ、ということが漠然と分かるくらいである。
実は世界中は紛争状態にあり、法治国家といえるのは日本だけである。
国民をペテンにかけているシビュラシステムを、なぜ常森朱が守ろうとするのか、世界の現実を知ると理解出来なくもない。
このような悲惨な世界観を、「サイコパス」のファンである若い子たちは、どのように受け止めるのだろうか。
各国が自国の権益を強引に主張し、宗教や民族に基づく紛争がなくならい現状から見ると、絵空事ではない未来像だと思う。
単純にファンタジーの設定と割り切れるものではない。
「サイコパス」のテーマは「政治」だと思うのだが、キャラ物として観ている人も多いのだろうか。

シビュラシステムが輸出され、テスト運用されている国は、カンボジアを想わせる仏教国である。
安易にイスラム系にしないところが良い。
ゲリラのアジトに使われる仏教寺院などの美術も素晴らしく、エキゾチックな雰囲気が楽しめる。

TV版の残念なところは、主人公達が使うドミネーターという銃以外のデザインが、いまひとつなところだった。
劇場版では、メカニックデザインが大幅にレベルアップしている。
常森朱が日本から乗って行く旅客機の特徴的なフォルムを始め、歩く戦車や飛行型ドローンなど、「攻殻機動隊」を彷彿させるクオリティである。
それら兵器を使った戦闘シーンも迫力があるが、肉体を使った格闘も見せ場である。
ただ、画面がボヤケて見えたのは、映画館の設備が悪かったからだろうか。
ブルーレイで観直してみたいものだ。

ネタバレになるので詳しくは語れないが、現地軍やシビュラの陰謀など複雑に入り組んでおり、ハリウッド映画のような単純なSFではない。
その陰謀を知った上で、「歴史に学べ」と言い放つ常森朱の言葉は重い。
結果ではなく、選択したプロセスこそが重要であり、その自由を得るための戦いの歴史があった。
楽観を許さない最後のオチも現実的である。

日本のアニメは凄いところに来ているな、と思わせる映画だった。
そんなにグロテスクではないので、R15にする必要はないと思う。
多くの世代に観て欲しい。

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