昆虫はすごい

昆虫はすごい (光文社新書)昆虫を扱った新書が売れているというのは喜ばしいことである。
昆虫の世界は、想像もつかない驚異に満ちている。
多くの人にこの楽しさを味わって欲しいものだ。
ファーブルファンの私には、既知の情報も多かったが、知らないこともやはり多かった。
昆虫の世界は奥が深い。

昆虫の世界の面白さを知ってもらおう、という本なので、全体を貫くテーマや主張があるわけではなく、基本的に面白トピックの紹介になっている。

私のお気に入りのトピックは、以下の通り。

ある熱帯地域では、アリだけの生物量(バイオマス=そこに住んでいる全固体を集めた重さ)で、陸上の全脊椎動物(哺乳類や両生類、爬虫類など)の生物量をはるかに凌駕する。

昆虫の多くは飛翔し、変態する能力を持っている。
飛翔や変態する能力のない昆虫は、生活環境が単調で、その種も似たような形をしており、種類も少ない。
飛翔と変態する能力が、昆虫の多様性に影響を与える影響は大きいと思われる。

ある幼虫は、植物を変形させる化学物質を出して、実のないところに栄養のある実を作り出す植物操作を行う。

ハナカメムシ科に属するカメムシの一種では、雄同士が交尾を行う。
交尾といっても雄には膣がないので、トコジラミと同じように雄の腹部の適当な部分に陰茎を差し込み、精子を送り込む。
送り込まれた精子は、相手の精巣に辿り着き、その雄が交尾する時に使われる。

サムライアリの交尾をすませた雌アリは、クロヤマアリの巣に単独で侵入し、そこにいたクロヤマアリの女王を殺し、新しく女王に成り代わる。
そして自分の産んだ卵を巣にいたクロヤマアリの働きアリに育てさせ、餌もそれからもうらうのである。
まさにクーデターである

オンブアリやヤドアリのように、寄主に完全に依存したアリは、すでに多くのアリが持っている重要なさまざまな機能が失われてしまっている。
特筆すべきは、脳などの中枢神経の退化である。
つまり寄生に特化さえしていれば、頭を使わなくてもいいのである。

アリスアブの幼虫は、アリの幼虫室に棲み、幼虫や蛹を食べて生活している。
それはアリの巣の壁に貼り付いて、その一部になりきっているのであろう。
じわじわと「壁」が動いて、アリスアブの幼虫がアリの幼虫を食べているのに、アリはまったく気づかない。

などなど。

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