MM9シリーズ

MM9 (創元SF文庫 )怪獣が現れるパラレルワールドの日本で、怪獣の発生を予想し、対策を提案する気象庁の気特対(気象庁特異生物対策部)の活躍を描くシリーズである。
怪獣の存在をこじつけるための設定も楽しく、マニアな作者が好き放題やっているのがよく分かる。
怪獣などの選択に趣味が別れるところだが、日本ならではのSFである。

舞台は、怪獣が現れるという一点で異なる現代の日本である。
怪獣は天災の一種という扱いで、その管轄は気象庁になっている。
攻撃が必要な場合は、警察や自衛隊が対応するが、怪獣出現の予想と対策の提案を担当するのが、主人公たちの所属する気特対(気象庁特異生物対策部)である。

怪獣が日常的な存在なので、その規模を表わす尺度などももっともらしく設定されている。
それがタイトルにもなっているMMである。
こういう工夫があると、SFファンは楽しくなる。

MMは「モンスター・マグニチュード」の略で、怪獣の規模を表わす単位である。その起源は19世紀末にアメリカの怪獣学者ガスリーが怪獣のサイズから予想される災害の脅威度(罹災者数、死傷者数、倒壊家屋数、経済損失など)を0から5までの六段階で評価したことにはじまる。(中略)
「怪獣の体積が2.5倍になれば、人口密集地に及ぼす最大の被害は4倍になる」とガスリーは唱えた。怪獣の皮膚の厚さは体積の立方根に比例し、厚くなるほど弾丸は貫通しにくくなる。怪獣を殺すのに必要な累積ダメージは体積に比例する。(中略)
現在は同体積の水の重量に換算したトン数を基準にMMが算出されている。MM0は1トンの水に等しい体積の小型怪獣で、MMが1上がるごとに体積は2.5倍になる。

また、怪獣が実際に存在した場合、巨大な体重を支えられる骨格はないと言われているが、それをかわす方法として、怪獣は我々とは違う物理法則に支配される存在であるとしている。

物理法則に従えば、そもそも体重100トンを超えるような生物が直立歩行できるはずがないのである。どう計算しても、骨格や筋肉はそんな自重を支えられない。にもかかわらず、MM5以上の怪獣がこれまで世界各地に多数出現しているのだ。

我々がビックバンで作られた宇宙の法則「ビックバン宇宙」の住人であるのに対し、怪獣たちは「神話宇宙」の法則に従っている。
この理論が、ストーリーが進むに従って拡大し、ついには宇宙間戦争にまで発展する。

第1巻である「MM9」には5つの短編が含まれる。
最初の2話は、少し怪獣のイメージとは違うので戸惑う。
全体的なイメージは、「ウルトラQ」に近い。

第2巻「MM9―invasion―」は「ウルトラマン」である。
身体とともに大きくなる水着で裸体問題を解決したあたりは、アニメ版「デビルマン」を想わせる。
人間でないにしても、女の子が巨大化して戦うのは、私としては抵抗がある。
この巻からラブコメ要素が強くなり、読んでいてちょっと恥ずかしい。

第3巻「MM9―destruction―」は、著者も書いているが、「怪獣大進撃」である。
どの怪獣が、なにを元にしているか推理する楽しみがある。
巨大な女の子が正義の味方だと、映像化は難しいだろうと思う。
ただ、神話に関する説明が長くて、少し疲れる。

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