信越トレイル1

山頂を目指さずに歩く「ロングトレイル」が面白そうだ。
まずは埼玉県内で試そうと思ったが、家族向け以外のキャンプサイトが見つからなかった。
ということで、日本で一番古いロングトレイルである「信越トレイル」に挑むことにした。
しかし、夏場の低山は厳しかった。

「信越トレイル」は、長野県の斑尾山の山頂をスタートとして、天水山までの80キロを歩く、日本で一番歴史のあるロングトレイルである。
テント泊で踏破出来るようにテントサイトも充実しており、テント泊料金も安い(1,000円くらい)。
今回は、4泊5日で歩き切るつもりなので、キャンプサイトを4ヵ所予約した。

初めてのソロハイクなので、食料や緊急時の対応など、頭が混乱するくらい考え抜いた。
結果的には、必要なものが無かったり、不要なものを持って行くことになったりした。
このような経験値は、現場で上げていくしかない。

大宮から飯山まで、北陸新幹線に初めて乗った。
北陸新幹線では1時間30分程度で到着してしまう。
便利になったものだ。
飯山駅から斑尾高原まではバスで30分程度。
終点の斑尾高原ホテルから、初日の宿である「ペンションとも」まで少し歩く。
1日8時間程度は歩くことになるので、初日は前乗りしてペンションに泊まることにしたのだ。
300円の日本酒を頼むと、ちょっとしたオツマミが付いてきた。
こういう対応は嬉しい。

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翌朝、フルーツたっぷりの朝食を食べた後は、ペンションの車で「チロル前登山口」まで送ってもらい、「信越トレイル」スタートである(8/14 8:00)。

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あいにく天気は良くない。
しかし、暑い。
夏の低山はとても暑く、やたらと汗をかく。
汗の量はマラソンをしている時のようである。
ドライのTシャツは問題ないが、綿の短パンは汗でびしょびしょになってしまった。
海水パンツでも履いて歩いた方が良いのではないか、と思うくらいの汗である。

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スタート直後、斑尾スキー場のゲレンデを直登する。
これがなかなかキツい。
テントや5日分の食料と3リットルの水が入ったザックが重いし、風がないので蒸し暑い。
スタートしてすぐに帰ろうかと思った。
そして、虫が多い。
小さな虫が顔のまわりにまとわり付き、耳に入ってきそうで落ち着かない。
耳を覆うように手ぬぐいを巻いたら、少しマシになった。

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斑尾山の山頂に到着(8/14 9:50)。
ここが「信越トレイル」のスタート地点である。
「信越トレイル」は、なぜか山頂からスタートする。
それ以前はカウント外ならば、もっと楽なルートが欲しいところだ。
山頂から歩き出し、元気な子供たちの集団とすれ違った後、道を間違えたことに気がついた。
危なくルートと反対側の登山口に下りてしまうところだった。
方向音痴の私が独りで山を歩くのは、とても危険なことを思い出した。
慎重に、来た道を引き返し、山頂のスタート地点を越えて万坂・山頂トレイルを歩く。
(分岐点「サ」8/14 10:21)

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その後は、万坂峠(8/14 10:42)、袴池付近(「へ」8/14 11:04)、袴岳(12:00)と迷うこと無く順調に進む。
高低差の少ない道を歩いている時は楽しいが、上り下りは暑くて楽しめない。
天気があまり良くないので、ビューポイントも今ひとつだった。
湿原などの植物も伸び放題で綺麗とは言えない。
きっと見頃は、春か秋なのだろう。

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今回は、時間節約と重量軽減のために昼食は行動食のみとした。
朝食に人気の「グラノーラ」は、行動食としても有名らしいので試してみたら、美味しいし、食べごたえがある。
今回の行動食のメイン食材に決定した。

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1日目にしてデジカメのバッテリーが無くなってしまった。
iPhoneのバッテリーを節約するために、わざわざデジカメを別に持って来たのに、とんだ誤算である。
デジカメのバッテリーはなかなか無くならないイメージがあったので、出発前に残量を確認しなかった。
仕方ないので、バッテリー残量を確認しながら、iPhoneで写真を撮ることにした。

13:14に初日の宿泊地「赤池テントサイト」に到着してしまった。
予定よりも2時間も早い。
その予定さえも、2時間の安全マージンを取った予定である。
テントを立てると、することがない。

することと言えば、水の補給である。
「信越トレイル」では、水場の水がそのまま飲めないことが多い。
そのため、トレイルを歩く時には浄水器の携帯が推奨されている。
赤池キャンプサイトにも水道はあるのだが、「この水は飲めません」と注意書きがある。
今回持って来た300mlの浄水器で浄水して、2リットルのハイドレーションに補給するという仕事が必須となる。
これが地味に疲れる。

赤池の周りを散策していると、先客が昼寝していた。
どうやら、私は間違って場所にテントを立ててしまったようだ。
トイレのある駐車場横にテントを立てたのだが、テントサイトはそこから300メートルほど離れた場所だった。
仕方ないので、テントを移動して、ズボンを乾かす。
テントを立てたら服を乾かす。これが今回の定番となってしまった。

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赤池テントサイトは、私と先客のおじさんの2人だけだった。
やはりシーズンオフなのか、歩いている最中もあまり人に会わない。
一度トレランの人に追いぬかれてビックリしたが、1日目に見た人間は10人以下だった。
静かで良いのだが、真夏に来るコースではない、ということなのかもしれない。

日のあるうちにアルファ米のチキンライスとレトルトの豚汁を食べると、寝てしまった。
日が暮れてから妙に騒がしいので、テントから出ると、夜だというのに駐車場に数台の車が停まっていた。
綺麗な夜空を観に来たのかと思ったら、遠くで花火が上がり始めた。
花火見学かと思ったら、そうでもないらしい。
子どもの声が、明かりのない池の方から聞こえて来る。
どうやらホタルを見に来ていたようだ。
ホタルを見るために、真っ暗な池で、明かりもつけずボートを漕いでいる。
姿が見えない子供たちの歓声だけが聞こえてくる。
不思議な感じだった。

2日目は5:30に起床したが、朝露に濡れたテントが乾くのを待っていたら出発は8:00になってしまった。
2日目は天気が良く、それゆえ暑さに苦しめられる1日となった。

沼ノ原湿原(8/15 8:30)ではバッタやトンボにたくさん出会った。
人間を警戒しないのは良いのだが、気をつけないとバッタを踏み潰しそうななる。

希望湖(8/15 9:08)にはボート小屋があり、なんと物販までしている。
久しぶりに文明に出会えたような感動である。
しかし、ビールは売り切れでノンアルコールしか残っていなかった。
仕方なく冷たい緑茶とぶどうのグミを購入し、日陰で涼みなから緑茶を味わった。

毛無山の山頂に9:55に到着。
たいしたことのない登りなのだが、暑さと荷物の重さでフラフラになる。

涌井新地(8/15 10:41)の少し先の湧き水で水を補給する。
昨日キャンプ場で一緒だったおじさんがいたので、湧き水の場所を聞くと、すぐ目の前だった。
教えてもらわなかったら、きっと見逃していただろう。

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しばらく農道を歩き、国道292と交わる涌井で行動食の昼食を取る(8/15 11:39)。
富倉峠(8/15 12:40)を越えて、ソブの池に到着(8/15 13:11)。

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ソブの池から桂池に向かうルート上に「入山禁止」の立て札があった。
これは、困った。
ここからの別ルートはないのだ。
電波が入るようなので、信越トレイルクラブ事務局に電話してみると、ルートを歩いても問題ないとの回答を得た。
電波が入って本当に良かった。
信越トレイルは、電波が入るところが多いのでとても助かる。
いざとなったら電話出来るように、iPhoneのバッテリーは大事にしなければいけない。

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黒岩山の東屋で休憩していると、元気なトレラン・チームが駆け抜けていった(8/15 14:30)。
荷物の少なさが羨ましい。

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黒岩山を下り、桂池キャンプサイトの手間の給水ポイントである太郎清水に到着(8/15 15:07)。
しかし、水が全然出ていない。
涸れていることがあるとガイドブックにも書いてあったが、キャンプサイトに行けばなんとかなるだろうと先を急ぐ。

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桂池キャンプサイトには、赤池キャンプサイトのような水道はなかった。
避難小屋の中に、太郎清水が涸れていた場合のお助けグッズとしてクーラーボックスが置いてあった。
喜んで開けてみたら中は空っぽだった。
クーラーボックスの隣にポンプとポリタンクがあったので、桂池の水を汲んで、浄水器で浄水した。
サバイバルな旅だ。

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今夜は貸し切りのようなので、テントサイトのど真ん中にテントを立てて、服を干す。
アルファ米ドライカレーとのなめこ汁を食べて、寝ることにする。
首の辺りがムズムズすると思ったら、アリが這っていた。
自分の身体が痒いのが、気のせいなのか虫なのか、悩まされる夜になってしまった。

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夜中に雨が降り始めた。
気にせず眠り続けたら、朝になっても雨は止んでいなかった。
天気予報では9時に止むことになっていたので、テントを避難小屋に引っ張りこんで、雨宿りをすることにした。
しかし、待てど暮らせど雨が止む気配がない。
雨の中、重い荷物を背負って山の中を8時間も歩きたくないので、10時までに止まなかったら撤収することにした。

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止まなかった。
麓の町まで歩くか、タクシーを呼ぶか迷っていると、駐車場に車が止まった。
信越トレイルの事務局の人が施設のチェックに来たのだ。
これから施設のチェックに回るので、1時間ほど待ってくれれば、駅まで送ってくれるとのありがたい申し出だった。
当然、1時間でも2時間でも待つ。

信越トレイル事務局がNPOで専任の担当者がいないとか、トレイルの整備は大変だとか、現地の話を聞きながら飯山駅まで送ってもらった。
なんたるラッキー。

そのうち桂池からの続きを攻めたいと思う。
テント泊にこだわらず、民宿で泊まって登山口まで送ってもらうのも良いかもしれない。
季節は、きっと秋がいい。

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