ポジティブ心理学の挑戦

ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へアメリカ心理学会の会長によるポジティブ心理学についての著作である。
会長がこのような本を出版するということは、ポジティブ心理学がアメリカではマイナーな分野でなくなったということなのだろう。
本書を読むと、アメリカ社会におけるポジティブ心理学の幅広い影響が理解できる。
しかし、新しい概念を翻訳書で意味を掴むのは難しい。

著者が直面したのは、従来のポジティブ心理学の問題点であった。
従来のポジティブ心理学の中心である「幸福理論」のは、いくつかの問題があった。
「テーマ:幸福」は、「幸せ」の定義が曖昧である。
「尺度:人生の満足度」は、「気分」による影響が大きい。
「目標:人生の満足度の増大」は、「陽気な気分」の増大に過ぎない。

人間の心理のネガティブな面ではなく、良い部分のフォーカスする考え方だけでも意味があるが、科学的には荒削り過ぎると私も思っていたが、当事者も同じだったようだ。

従来の考え方に変わり、彼が中心に据えたのが「ウェルビーイング理論」である。
「テーマ:ウェルビーイング」は、尺度に含まれる複数の要素の構成概念である。
「尺度」は以下の5つ。
・ポジティブ感情
・エンゲージメント 参画意識
・意味・意義 自分よりも大きいと信じる存在に属して仕えること
・ポジティブな関係性 他者とのポジティブな関係
・達成感
「目標:持続的幸福度の増大」は、計測可能で公的政策の指標にもなる。

翻訳が難しいせいか、理解し切れないところもある。

簡単だが効果のあることが実証されている「エクソサイズ」がいくつか紹介されている。
・感謝の手紙を出す。
・うまくいったことエクソサイズ。
 今日うまくいったことを3つ書く。悪いことではなく、良いことを味わう。
・特徴的強みエクソサイズ。
 「強みテスト(VIA)」で自分の強みを理解し、強みを頻繁に活用する。

薬とセラピーは実は効果がない、という内情暴露があり、その代替でもあるポジティブ心理学のアメリカにおける展開が語られる。
・MAPP(応用ポジティブ心理学修士過程)プログラムの成功
・総合兵士健康プログラムによる陸軍での採用

その他にも、トラウマを成長へ利用した事例や心理だけではなく健康をも対象にしたポジティブヘルスなど、著者が関わった幅広い分野の事例が紹介されている。

本書の内容をすべて理解したとは言いがたいが、簡単なエクソサイズから実施してみようと思う。

来週、毎晩寝る前に10分費やしてみよう。今日うまくいったことを3つ書き出して、それがどうしてうまくいったのかを書いてみよう。(中略)
自分の人生にポジティブな出来事が起きた理由を書くというのは最初のうちは厄介に思えるかもしれない。だが、1週間はこの通りにやってみてほしい。そのうちに慣れてくるはずだ。きっと6ヶ月後には、落ち込むことが少なくなり、幸せになり、このエキササイズにはまっていることだろう。

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