フューチャー・オブ・マインド

フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する脳及び心についての最新研究を網羅的に紹介した本である。
著者のミチオ・カクは、未来の予想についての本を多く出版している物理学者である。
科学者にしては説明の内容がSF的過ぎる気もするが、専門ではない脳科学や心理学の分野を解説しているので、その分野の素人でも分かり易い説明になっている。
SFやホラー映画と小説を使った例えが多いのも楽しい。

現代における脳科学の急速な進歩は、その計測器の進歩に由来する。
fMRIやPETは、心と脳の活動をリアルタイムかつ詳細に計測することを可能とし、脳波に頼っていた研究を大幅に進歩させた。
人間が何かを感じている時に、脳のどの部位が活発に活動しているかを判定出来るのだ。
この技術を応用して、眠っている人の夢をモニターに表示する研究さえ進んでいる。

「意識」とは、未来をシュミレートする能力である。
この本において、著者はそのように定義している。
物理学者だけあって、明確で、潔い定義である。
この定義を元に、動物は「意識」を持つか、エイリアンはどうか?という議論を展開している。

ヒトゲノム計画が完了したので、アメリカとヨーロッパは、脳の解析を国家プロジェクトと定めている。
この分野は、今後数年で飛躍的に進歩するのは間違いない。
脳科学研究の多岐にわたる現状レポートである本書を読みと、脳の仕組みがここまでわかっているのかと驚くばかりである。
これが更に進むとなると、恐ろしくもなってくる。
私が生きている間に、心の謎がどこまで解明されるか、楽しみでもある。

時として、分離脳の人は、片方の手を押さえつけようともがく、漫画の世界の住人になったかのように思う。医師たちはこれを、ストレンジラブ博士症候群と呼びもする。『博士の異常な愛情』という映画のなかで、この博士が片手をもう片手で押さえつけようとするシーンがあるからだ。

彼らの研究では、被験者をまずMRI装置に入れ、10X10ピクセル(画素)の枠内にドット(点)を配した白黒の画像を400枚見せる。1度に1枚ずつ画像をさっと見せて、各画像に脳がどう反応するかをMRIで記録していく。やがて、このBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)の分野で研究をおこなっているほかのグループと同様、特定のMRIパターンにそれぞれのピクセルがを対応させた、画像の辞書を作成する。これで科学者は辞書の逆引きができるようになり、被験者が夢を見ているあいだのMRIによる脳スキャンデータから、心に浮かんだ画像を正確に再現できるわけである。

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