メソッド15/33

メソッド15/33 (ハヤカワ文庫NV)妊娠中の女子高生リサ・イーランドが誘拐された。
人身売買を狙う犯人の目的は、少女のお腹の中の赤ん坊だった。
しかし、誘拐された女子高生は天才少女だった。

リサの目的は、いかに脱出するかではない。
いかに犯人を殺すかだった。
理系女子のリサは、毎日、犯人の行動を観察し、計測し、記録し、復讐のチャンスを待つ。

彼女があまりにも自信たっぷりなので、読者も彼女の安全をあまり心配しなくなってくる。
それより、どのように犯人をやっつけるのかをワクワクして待つことになる。

彼女は頭が良いだけではない。
感情のスイッチを自由に切られるという特殊な才能を持っている。
だから、恐怖に立ちすくむこともなく、必要な行動ができる。
障害とも言える能力だが、読んでいてとても頼もしい。
ハンニバル・レクター以来のニュー・ヒーロー(ヒロイン)だ。
いまのところ、人は食べないが。

裏表紙の解説で天才少女の存在は知っていたが、犯人を追うFBIの2人のキャラクターは、嬉しいボーナスだった。
本書の半分のパートは、FBIの捜査官であるロジャー・リウの視点で語られる。
子供の頃のトラウマを克服するために、誘拐事件の捜査を中心に活動するリウは、絶対記憶を持っている。
リウのパートナーは、猟犬の鼻を持つ女捜査官ローラである。
男より男らしいローラの行動は、読んでいて爽快だ。

著者の長編デビュー作なので、荒削りなところもあるが、とても楽しいエンターテイメントだった。
この小説は、映画化されるに違いない。
でも、リサがイメージ通りになるとは思えないので、映画版は観ない。

「脳をスキャンしたところ、注意、思考、意欲、情操などをつかさどる前頭葉がふつうの人より大きいことがわかりました。統計的に言えば、99パーセンタイル。そう、率直に言って、上位1パーセントになるでしょうか。きわめて稀です。社会病質者ではありません。感情を理解できますし、感じようとすればそれもできるのです。しかし、そのような選択をしないかもしれません。心のなかに喜び、恐怖、愛などを体験するためのスイッチがあって、どのようなときでも、それをオンにしたりオフにしたりできるということです」

わたしは手を挙げて、やめさせた。手のひらを開き、窓ガラスに押し付ける。顔はまだ水中に没していないので息をすることはできたが、すでに水は首のあたりまできている。
「まず、車内が水でいっぱいにならなくちゃ。そうすれば、外と内側の圧力が同じになってドアが開く。落ち着いて」
高校の物理の授業を覚えていないわけ?

「わたし、リサ・イーランド。救急車を呼んだり、無線で連絡なんてしないで。こんなことをしでかした共犯者どもをとっ捕まえたいから」

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