昆虫は最強の生物である

昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略地球における生命の歴史を、昆虫を中心に解説している。
生命の歴史は、どうしても人間中心か、哺乳類中心となりがちだが、地球上に生息する種の多さから言えば、昆虫の方が圧倒的に多い。
この本では、5億年前から現代に至る、昆虫の変化と繁栄の歴史が語られている。
その多様な戦略には驚くばかりだ。
読んでいて楽しいけれど、一度読んだだけでは覚えきれない情報量である。
何度か読みかえしたい本である。

昆虫の歴史を簡単にまとめると、次のようになる。

カンブリア紀 5億4,100万〜4億8,500万年前
オルドビス紀 4億8,500万〜4億4,400万年前

動物が出現して、たった500万年のあいだに、動物は急激に進化した。
カンブリア爆発と呼ばれるこの時期に、三葉虫等節足動物が誕生した。
氷河の進出や大陸移動、彗星の到来、小惑星の落下によって大絶滅に見舞われるが、すぐに新しい種が生まれ、空白になったニッチを埋めていく。
この時期に酸素濃度が現代に近くなった。
酸素は生物にとって毒物だが、多細胞になることで毒性を回避し、酸素呼吸で活発に動けるようになった。

シルル紀 4億4,400万〜4億1,900万年前
動物が陸上に進出した。
ハイギョが陸上に進出する4,000万年前に節足動物は上陸している。
植物より先に動物が陸上に進出した。
植物の進出は、オゾン層の発達を待たなければならなかった。
サンゴ礁が発生し、海中の多様性が進んだ。

デボン紀 4億1,900万〜3億5,900万年前
節足動物の6本脚が発達した。
陸上植物の群落が登場し、昆虫の中には地中で生活するものも現れた。

石炭紀 3億5,900万〜2億9,900万年前
昆虫が飛ぶようになった。
昆虫の翅は、ソーラパネルのように太陽の光りを利用して、体温を上げるためだったという説がある。
また、交尾のために高い木に登り、滑空するために発達したという説もある。
石炭や石油が石炭紀の地層から出るのは、植物を分解する生物がまだ発達していなかったからだ。

ペルム紀 2億9,900万年〜2億5,200万年前
ペルム紀の大量絶滅(原因不明)で海中種の90%以上が絶滅した。
昆虫も22目のうち8目が姿を消した。
同翅目が注射器のような口器を発達させた。
この口器を植物組織の奥深くまで突き刺し、液体を吸い取るようになった。
完全変態が始まった。

三畳紀 2億5,200万年〜2億100万年前
恐竜が発生した。
当時の恐竜は昆虫と共存していたと思われる。
単体では恐竜の方が大きいが、全体としてはカリバチだけでも恐竜の規模を上回る量で存在していた。

ジュラ紀 2億100万〜1億4,500万年前
寄生バチが登場した。
ジュラ紀末期には数百種になり、白亜紀には数千種、現代では数十万種にも及ぶ。
捕食者は複数の獲物が必要だが、寄生バチは一匹の獲物を標的とし、それだけ食べて成虫になる。
寄生者として宿主の体内で摂食する内部寄生が発達した。
宿主の体内に入れば、宿主といっしょに移動が可能となる。
ほぼすべての種類の昆虫の体内で摂食できた。
産卵のときにだけ、一時的に麻痺させる「飼い殺しの寄生者」も登場した。

白亜紀 1億4,500万〜6,600万年前
恐竜が絶滅した。
昆虫による受粉が起こり、植物と昆虫の共進化が進んだ。
ガとチョウが繁栄し、社会性昆虫であるアリやハチが登場した。

新生代 6,600万年〜現在
競争がないニッチとして成虫に寄生するハチが登場した。
人類が地球を広範囲に改変する前の20万年前ごろ、生物種の数が最高レベルに達した。

ここで読者の皆さんに提唱したい。
動物の体の形として優れているのは、外骨格のほうだ。
有害な排泄物を体内に蓄積するのではなく体外に排出したほうがいいから、排泄物を利用した外骨格のほうがそもそもはるかに発達しやすいし、言うまでもなく、天敵から身を守れるという直接的な強みによって繁栄の可能性はぐっと高まる。
カンブリア紀末に膨大な数の種を誇っていた三葉虫と、堆積物に身を潜めていた私たちの遠い祖先ピカイアを比べてみるといい。
さらに、現存する脊椎動物のすべての種を足し合わせても、天文学的な数の種を擁する節足動物の何分の一にも満たない現実を考えてみてほしい。

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