海辺の幽霊ゲストハウス

海辺の幽霊ゲストハウス (創元推理文庫)アリソン・カービーは離婚した後、一人娘のメリッサを連れて、故郷のニュージャージーに帰って来た。
そこで古い屋敷をリフォームして、ゲストハウスを始めるつもりだった。
しかし、その屋敷には男女の幽霊が取り憑いていた。
幽霊は出て来るが、全然怖くないユーモアミステリーである。

女子力はゼロだが大工仕事が得意なアリソンは、自力でリフォームを行い、ゲストハウスをオープンするつもりだった。
しかし、彼女を2人の幽霊が邪魔をする。
その屋敷で殺された2人から、彼らを殺した犯人を探して欲しいと頼まれるのだ。
断ると、リフォーム作業の邪魔をされてしまう。
仕方なくアリソンは犯人探しをすることになる。

この小説はアリソンの一人称で語られる。
リーフォームに、子育てにと奮闘する彼女は、時にシニカルなコメントをして読者を笑わせてくれる。
父親に仕込まれたので大工仕事は得意だが、料理は得意ではなく、娘との食事はもっぱら外食かピザなどの仕出しである。
シングルマザーでも恋はする。
娘の学校の先生に恋をするが、これは娘にはとても評判が悪い。

小学校4年生の娘メリッサは、子供らしくわがままなところもあるが、大人より賢い面もある。
アリソンの母親は、人前もはばからずアリソンを褒めまくる親バカなので、若干アリソンから煙たがられている。
この母娘3代の会話が楽しい。

屋敷に取り憑いている幽霊は、ポールとマキシーだ。
マクシーは20代後半の女性で、屋敷の元の持ち主。
気が強くてアリソンと衝突することが多いが、メリッサとは仲がいい。
物理的な力の強い彼女は、気に食わないことがあると、すぐにリーフォームの邪魔をする。
ツンデレ幽霊である。
ラストで母親と再会するシーンは泣かせる。

ポールは、マクシーが雇った探偵である。
探偵であるにも関わらず、マキシーと伴に殺されてしまう。
犯人探しの推理担当はもっぱらポールである。
普段は冷静な彼も、アリソンが学校の先生に惚れると嫉妬したりする。

女刑事アニータとアリソンの関係も楽しい。
真面目だが杓子定規な彼女は、幽霊から情報を得ているとは言えないアリソンと、ことあるごとに対立する。
本当はいい人なのだろうが、規則通りに行動しようとするのでアリソンと合わない。
この2人の会話が笑える。
そして、強面の彼女は、実は幽霊が怖い。

このような登場人物が、ポールとマキシーを殺した犯人とその動機を探っていく。

原題の「Night of the living deed」は、勿論あの映画へのオマージュである。

「あなたに好かれていないって感じることがあるんだけど」
「そういう感覚は大事にしたほうがいいわね」

「あなたには外で待つように言いませんでした?」
「確かに。でも”いやだ”と答えることにしたの」

「幽霊が家を壊すのを手伝いたい人?」とわたしは大声で呼びかけた。
半ダースほどの子供が鬨の声をあげ、穴開けに加わった。

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