タイタス・クロウの事件簿

タイタス・クロウの事件簿 (創元推理文庫)クトゥルーとその狂信者と戦うオカルト探偵タイタス・クロウの活躍を描く短編集である。
古典的幻想小説の重厚さと、現代小説の読みやすさを併せ持つ小説になっている。
オカルトに関する造詣が深く、しかし科学的・現実的な視点も忘れないタイタス・クロウは、得難いヒーローだと思う。

この本は、タイタス・クロウに関する11本の中短編から構成されている。
中には、本当に短い短編もあり、中にはタイタス・クロウが登場しない作品もある。

「誕生」
タイタス・クロウの誕生秘話である。
タイタス・クロウがなぜ彼のような存在になったのか、その背景が語られる。
この作品は、タイタス・クロウの誕生で終わる。

「妖蛆の王」
タイタス・クロウの若い頃の冒険である。
雰囲気は「吸血鬼ドラキュラ」のようだが、怪しい館に招かれた青年にオカルトの知識があったところが、全く違う。
彼の武器は数秘学だった。

「黒の召喚者」
魔導書を巡るオカルティスト同士の戦いである。
電話を使った不可能犯罪は、ミステリーのようだが、オチはオカルトだった。

「海賊の石」
古代の秘宝によって引き起こされる悲劇を描いている。
クトゥルーとは関係ない古代の呪いがテーマとなっている。
比較的移動が多く、スケールの大きな話である。

その他にも「ニトクリスの鏡」「魔物の証明」「縛り首の木」「呪医の人形」「ド・マリーニの掛け時計」「名数秘法」「続・黒の召喚者」といった作品が収録されている。

だが質問に嘘を答えておいたのは、まずは無難だった。数秘学を学んだクロウにとって、名前や数や日付がいかに重要なものであるかは常識だーましてオカルティストの前で口にするとなれば! 人類史の秘められた側面において、自分の誕生日を敵対者に教えた魔術師は一人もいなかったはずだ。運命を左右する重要な情報であり、どう利用されるかわかったものではないからだ。

封筒のなかになにが入っているかもわかっていた。あえてあけてみることはない。ゲドニーの力が超自然的なものであると心の底から信じているわけではない。封筒のなかのカードの正体は、致死性の毒薬を高濃度でしみこませたものである可能性が高い。しかもきわめてすみやかに体内に浸透するものであるはずだ。

「この装丁は・・・」とつぶやく。「いまだに汗ばみつづけている。驚くしかないな、400年以上前に死んだ人間のものであるかと思うと!」

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