ぼくが死んだ日

ぼくが死んだ日 (創元推理文庫)深夜の道で車を運転していると、道に迷ったらしい女の子を拾い、乗せることになる。
気がつくと、女の子は消えていた。
典型的な怪談のような状況から始まるこの物語は、主人公の高校生マイクを更に不思議な世界へ誘う。
しかし、怖い話ではなかった。
若くしてこの世を去った子供たちの語る多くの悲しい物語だった。
読後感が爽やかなのは、恨みを語るのではなく、他人を庇って亡くなった勇気ある子どもたちだからだろう。

女の子が既に死んでいることを母親から聞いたマイクは、彼女に頼まれて墓にサドルシューズを置きに行く。
そこは、若くして死んだこどもばかりの墓場だった。
マイクは、こどもたちの幽霊に取り囲まれ、こどもたちが死んだ時の話を聞くことになる。

こどもたちの話は、とてもバラエティに富んでいて、飽きさせない。
簡単に言うと、以下のようなテーマである。
・うそつき少女
・老婆の呪い
・お化け屋敷の探検
・通販で送られてきた怪物
・姉への憎しみ
・ロミオとジュリエット+猿の手
・呪われた車
・強迫神経症の少年
・ギャングの秘法

呪われた車は、ほとんどスティーヴン・キングの「クリスティーン」そのままである。
よっぽど作者が好きなのだろう。
他にも有名な幽霊話のオマージュになっている話がある。

作者はヤングアダルト小説の作家であるだけに、それぞれの作品が、子どもの視点で描かれており、シンプルで面白い。

マイクが話を聞くことで、子どもたちは救われることになる。
語る、知られることで「意味」が与えれれる。
「物語」の役割を考えさせられる小説だった。

マイクの口から低い叫び声が漏れた。本当だったなんて。おれは幽霊を車に乗せてしまったのだ。でも、恐怖のどん底に彼を落としたのは、その事実ではなかった。そうではないの。自分がつまずいたものが目に入ったのだ。
サドルシューズだった。55足のサドルシューズが、雑草だらけのキャロルアンの墓のまわりに散らばっている。

「マイク」
「あのさ、マイク、気まぐれな運命の話を聞きたくない?」
いやだなんて、言えるのかよ、とマイクは思った。

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