破壊する創造者

破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)この本のテーマは「共生」である。
ダーウィンの進化論は、「突然変異」による進化で語れれることが多いが、本書では、進化のエンジンとして「共生」が重要であることが、多くの事例を使って説明されている。
読んだ人の生命観に影響を与える一冊である。

レトロウィルスは宿主の体内に侵入すると、宿主の遺伝子を改変し、自らを生産するようにする。
エイズのようなレトロウィルスによって死ぬ個体もあるが、生き残った個体はそのウィルスを体内に持つ「内在化」という状態になる。
これは、2つのゲノムが共生し、新しいゲノムとなった状態である。
人間のゲノムにも、過去にウィルスの侵入によるものと思われる痕跡が沢山ある。
酸素の呼吸にはなくてはならないミトコンドリアも共生の結果である。

2つのゲノムがひとつとなると、染色体の数は倍になり、その余剰により、環境への適応可能性が向上する。
これも、ひとつの進化の形である。

進化の推進力には、次の4つがある。
・突然変異
・共生発生
・異種交配
・エピジェネティクス

エピジェネティクスとは、DNAによらない、環境への反応による身体の変化である。
ハーレムを形成するサカナの中には、一匹しかいないオスが死ぬか、居なくなると、一番体の大きなメスがオスに性転換する。

この頃のSFでは得られなくなった、センス・オブ・ワンダーを感じさせてくれる一冊だった。

遺伝子レベルで生物が共生している場合は、両者のゲノムが一体化し、まったく新しいゲノムが生まれる、ということがある。元々はまったく異なった種の生物であるにもかかわらず、両者のゲノムが一体化するという、とてつもない変化が急に起こることがあるのだ。

タンパク質を合成するための情報を保持する、いわゆる「遺伝子(機能遺伝子)」は、全体のわずか1.5%を占めるに過ぎないと聞けば、たいていの人は驚くだろう。何と、その重要なはずの部分よりも、人間に過去に感染したウィルスの名残とされる”HERV(ヒト内在性レトロウィルス)”と呼ばれる部分の方が多いのだ。

[amazonjs asin=”4150504202″ locale=”JP” title=”破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)”]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です