フロスト始末

フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)だらしなく、お下劣だが憎めない中年刑事ジャック・フロストの活躍が楽しめるのもついに最後である。
とても寂しいが、作者が死んでしまったようなので仕方ない。
最後の本作も、安定のフロスト品質で、品のない彼のセリフと行き当たりばったりの捜査が楽しめる。

上司の陰謀で、ついにフロストは署を追い出されることになる。
何とか逃げる方法がないかとフロストが知恵を絞る間にも、次から次へと事件は発生し、ワーカホリックな捜査は続く。
こんなに睡眠時間が少なくて、よく死なないものだと関心してしまう。

軽妙な会話に気を取られて忘れてしまうが、フロストの棲む街では陰惨な事件が多い。
今回もティーンエージャーが何人か殺されるし、事件はそれだけではない。
普通のミステリーならば、何冊分もの事件が発生し、フロストは同時に捜査することになる。
それぞれの事件の間を思いつきのように動き回り、何となく解決してしまうことも多い。
そうでないこともあるが。

もうフロスト刑事の活躍が読めないと思うと、とても残念だ。

「諒解。そうするよ、ジャック」
「ああ、それともうひとつ。しかるべき場所を見つけたら、おれの代わりに小便をしといてくれー膀胱がぱんぱんではち切れそうなんだ。そのあとでなら、自分の分もしていいぞ」

「当たり前のことを訊くなって。入れてたに決まってるんじゃないか。大事なものをしまっておくなら、財布がいちばん安心できるだろう? 暗証番号はカードの裏側に書いておくことにしてるんだ」
フロストは笑みを浮かべた。「ビリー君、きみのような抜け作がいないと、悪党どもはお手上げだろうな」

「勝手な真似をすると、スキナーがいい顔をしないんじゃないか」とジョンスン巡査部長は言った。
「そう言われると、ますます愉しみが増すってもんだよ」フロストはおつに澄ました笑みを浮かべた。

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