虚ろなる十月の夜に

虚ろなる十月の夜に (竹書房文庫)巻末の訳者あとがきにあるように「さて、諸君。ロジャー・ゼラズニイである。」である。
ゼラズニイがまだ生きていたのか!と思ったが、そうではなく本書は未訳だった遺作を初めて翻訳し、日本で出版したもののようだ。
SF界のメジャーな賞を何度も受賞したゼラズニイが、遺作となる本書で選んだネタは、クトゥルーである。
これは読まないわけにはいかない。

本書では、ストーリーが展開する中で、徐々に謎が明らかにされる。
あらすじを簡単に説明するために、ここでは設定を明らかにしてしまうが、謎の解明過程を味わいたい人は、ここから先は読まない方が良い。

数年に一度、古き神々(クトゥルー)を召喚しようとする人々とそれを阻止しようとする人々が集まり、人知れず戦いを繰り広げる。
今回集まったのは、切り裂きジャック、シャーロック・ホームズ、ドラキュラ、フランケンシュタインなどのフィクション界の巨人たちだ。
日本のゲーム・アニメであるFateに似たような設定だ。
しかし、ジャックのパートナーである犬である。
これだけ豪華なキャラクターを配しておいて、あくまでパートナーの動物たちの主観で語られるのが面白い。
状況としてはダークファンタジーなのだが、会話の主体は犬、猫、コウモリ、トカゲなので、映像を想像するとディズニー映画のようになってしまう。

それぞれの動物たちは、自分がどちらの陣営かを隠しながら、情報収集を続ける。
召喚の場所が重要であり、それを計算するには、誰がどちらの陣営で、どこに住んでいるかが重要だからだ。
そして時は訪れ、クトゥルー召喚のための戦いが行われる。

最後の戦い自体は地味だったが、豪華なキャスティングと捻った作風が楽しめる小説だった。
パートナーの動物の数が多く、名前と役割が一致しなかった。
登場人物紹介の一覧が欲しいところだ。

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