主人公は、人に接触することで、その人の身体に乗り移ることが出来る「ゴースト」である。
なんと安易なアイディアだと思ったが、この設定によりとても面白い小説に仕上がっている。
手に汗握るアクション小説でもあり、タイムトラベルのような時代小説でもあり、男性女性を超越した恋愛小説でもある。
この素晴らしい小説が、あまり評価されていないのは残念である。
物語は、主人公が突然撃たれるところから始まる。
正確には、ゴーストである主人公が、ホストである女性から他の人間に移った直後、その女性が撃ち殺される。
主人公は、彼女を撃った犯人を追いかけるが、犯人の背後にはゴーストを狩る組織があった。
ゴーストである主人公は、自分自身の身体を持たない。
複数の人間の身体を乗り換えながら逃亡し、相手を追跡し、闘う。
時には倒すべき相手の身体に乗り移りながらの死闘は、とても面白く、小説ならではの表現だと思う。
この映像化は難しいだろう。
ゴーストたちは、ホストが死ぬ時に他の身体に乗り移れば、死ぬことはない。
吸血鬼のように不死である。
主人公は、とても長くゴーストとして存在しているので、多くの時代を経験している。
追憶として語らえる様々な歴史的人物との関わりは、時代小説を読むようである。
ゴーストは、男にも女にもなる。
だから、愛する相手の性は、その時々によって変わり、また相手の性は意味がなくなっていく。
主人公は、基本的に相手の身体を奪うのではなく、ホストと契約して身体を借りる。
そして、ホストを愛する。
物語の最後、主人公はある人物を愛するようになる。
まさか、恋愛小説として終わるとは。
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