火星の遺跡

火星の遺跡 (創元SF文庫)日本で大人気の「星を継ぐもの」のジェームズ・P・ホーガンの新作である。
まだ生きていたのか!と、まず驚いた。
調べてみると、2010年に69歳でなくなったおり、「火星の遺跡」は2001年の作品だった。
しかし、「火星の遺跡」は、「星を継ぐもの」の作者とは思えない、元気なエンターテーメントだった。
書いたのが若手ななら「軽すぎる」と思うかもしれないが、60歳でこんなエンターテーメントを書けるのは凄いと思う。

火星の都市でベンチャー企業がテレポーテーション技術を完成させたと思われたが、研究者の周りで不審な事件が起こる。
その企業の広報担当を友人に持つフリーの紛争調停人キーラン・セインは、事件の調査に乗り出す。

ひとことで言えば「SF的アイディアを置き去りにしたインディ・ジョーンズ」である。
テレポーテーション技術の完成、異星人による古代文明の存在というSF的アイディアは深掘りせず、そこから発生する探偵小説的なエンターテーメントが中心である。
それはそれで面白いのだが、「星を継ぐもの」の作者が、こんな小説を書いたのが驚きだ。
テレポーテーション技術の副産物が、ポーの「ウィリアム・ウィルソン」のようなドッペルゲンガー問題になっているのも可笑しい。

主人公の愛犬であるギネスが、卑怯なくらいいい味を出している。

オリジナルはいまも生きていて、町のどこかに解き放たれている。

ギネスは彼女を見返してまばたきをし、できるだけ哀れっぽく同情を誘う感じに見せていた。

「それに彼はギネスの良き友人でもある。銀行口座に多額の入金があるだけでは不充分だというのなら、ギネスのためにやってほしい。あの目を見てくれ。あんな顔を拒絶できるわけがないだろう?」

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