メタバースとは何か

なかなか興味深い本だった。
メタバースのビジネスの考察もあるのだが、フィルターバブルの先にある心地良い世界としてのメタバースという考え方、自由と平等からの疲労の逃げ先という見方は面白い。
共感出来るところもある。
VRとAR、メタバース、デジタルツイン、ミラーワールドと各巨大IT企業の戦略が分かりやすく整理されている。

もしも多くの人が体感している通り、リアルの政治や社会が機能不全を起こし、格差が拡大・固定化され、個人主義の浸透が各種の配慮の必要性を生むことでコミュニケーションコストを高騰させ、逆に個人が生きづらい世の中が到来しているのであれば、リアルなどという最初から持てる者だけが勝つことを約束されたゲームから降りて、仮想現実で生きていくのはあり得る選択肢である。

社会のどこかに正解があって、それに対する回答が間違っていたのではなく、社会のどこにも正解はなく、自分なりの正解を作っていい、作らねばならないはずなのに、その正解が否定されるのである。
この差は大きい。
だから、些細なことでも、争いから降りることができない。
間違いの修正ではなく、自分の生き方の再構築をしなければならないからだ。
そんなしんどいことを、そうそうやりたくはない。

反対に、スマートグラスはその性質上、リアルの風景に情報を重ねて表示する形態しか取りようがない。ARなのである。
そう、グーグルが次に作りたいプラットフォームは、リアルの層に、デジタル情報の層を載せたARである。これが、グーグルが最もその既存資産と既存技術を活かすことができる次世代プラットフォームのあり方だ。

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