脳の地図を書き換える

脳は柔軟に変化する器官であり、常に課題に対する解決を目指す。
それは、何が入力であっても、それに対応することを意味する。
視覚や聴覚のような感覚器官や腕や足が失われても、それに対応しようとする。
新しい周辺機器が追加されても、それに対応しようとする。

DNAは完璧な装置を作る設計図ではなく、能動的に変化しようとするシステムの設計図である。
不完全である脳は、環境に合わせて変化する。

手を切断されると、担当していた脳の領域は、別のことに使われるようになる。
盲人の方が絶対音感を持つ人の割合が大きい。
数日間目隠ししていただけでも、神経の再構成が行われる。
色覚異常の兵士は、敵のカモフラージュを見抜く能力が高い。

脳は課題解決のものであり、どの感覚領域に接続されているかは問題ではない。
どのようなデータが入って来ても、脳はその活用方法を見つける。
情報という意味では、どの感覚が来ても変わらない。

色覚異常の芸術家が開発した「アイボーグ」は、色を音に変換する。
「アイボーグ」を装着すると、その音を色として認識できるようになる。

360度ヘルメットは、ヘルメットのカメラの360度の映像が、圧縮して表示される。
最初は戸惑うが、すぐに慣れて360度を認識できるようになる。

感覚を追加することもできる。
北を向くと振動するベルトを付けると、位置感覚から場所の記憶が向上する。

出力デバイスの追加も可能である。
4本足だろうと、ヒレだろうと、動かす方法を脳は探し出す。
VRにおけるアバターでも同じだ。

人間は世界をモデルで認識しており、歳を取るとモデルが完成に近づく。
そのため、モデルの差異である刺激を得にくくなる。

視覚野が乗っ取られるのを阻むために夢は存在する──それが私たちの仮説だ。なんといっても、地球の自転は触覚、聴覚、味覚、嗅覚にはいっさい響かず、暗くて不利になるのは視覚だけである。

本書の主張の中心は、〝ライブワイヤリング(Livewiring)〟という概念である。ライブワイヤリングを一言で表現すると「世界の変化に適応するために、常に自らを再構成し続ける性質」と言えるだろう。

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