モダンホラーにしては珍しいヒーロー【始末屋】ジャックが帰って来た!
と言っても、今回はホラーではなかった。
驚くことに、普通にハードボイルだった。
父親からの遺産で屋敷を受け継いだ女医を、アラブ人に雇われた傭兵が狙う。
それを助けるのが、裏世界の仕事人【始末屋ジャック】だった。
「マンハッタンの戦慄」で登場し、数多くのファンを獲得しながら、しばらくはポール・ウィルスンの作品から姿を消していたジャックが帰って来た。
しかし、この本は2001年出版で、その後もジャック・シリーズは何冊か発売されている。
単に、私がチェックしていなかっただけなのだ・・・
謎の屋敷の中では、当然邪神を崇める恐ろしい儀式が行われていると思ったら、秘密はもっと科学的なものだった。
いつになったら悪魔が出て来るかと思っていたら、出て来ないことに驚いた。
この本の魅力は、何と言ってもジャックのキャラクターである。
悪と戦う孤高の戦士かと思いきや、とてもいい人である。
仲は悪いが兄と姉の居る末っ子だし、ちゃんとした仕事に就いていないので、引退した父親に心配されている。
最愛の女性とその連れ子を何よりも大切にしており、ウィルスが怖い。
確かに、時には怒りにまかせて相手をボコボコにしたり、必要であれば殺人も辞さないし、姓もなく、社会的身分を巧みに抹消している。
しかし、爽やかな良い人である。
チンピラを追い払うためにオモチャの目玉を持ち歩き、「オレは目玉を食べるのが好きなんだ」と脅かすお茶目な面もある。
日本人エージャントとの友情が、途中で終わってしまったのが残念である。
今後のジャックの活躍が楽しみである。
この作品でも武器を仕入れるのは、「イッシャー・スポーツ店」だった。
キングのファイアスターターといい、モダンホラー作家はヴォークトが好きらしい。
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