岬一郎の抵抗

岬一郎の抵抗〈1〉 (集英社文庫)古典的な超能力テーマの小説である。
日本の下町に超能力者が出現したらどうなるか。
その状況を、真剣に、緻密に描いている。
まさにSFである。

半村良は、日本SF創世期の作家で、今や古典というイメージである。
しかし、改めて読んでみると全く古さは感じられず、むしろ現代の作家よりも迫力がある。

下町の公害問題に端を発した下町人情話と、超能力者の悲哀が前半である。
この組み合わせ自体もとても面白い。
話が進むにつれて、岬一郎の超能力が拡大し、国家でさえ介入出来なくなってしまう。
テーマは、単純な超能力者の悲哀から、国家や社会との対立を通して、進化した人類と取り残される人類の葛藤、社会による救世主の拒絶へと展開する。

もし、人の心が読むことで不正をただし、なおかつ完全に善良であるキリストのような救世主が現代に現れたら、人類は良き方向に導かれるか。
その疑問に対する実験である。
作者の出した回答は悲観的である。
人類は、まだその段階に達していないと。

かってのSFは、科学的なアイディアを元にした思考実験の場だったと思う。
そのような作品が減ってしまったのは、寂しい限りである。

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