劫尽童女

劫尽童女 (光文社文庫)ある世代の作家たちは、スティーヴン・キングから強い影響を受けている。
恩田陸もその一人らしい。
この作品は、キング初期の傑作「ファイヤースターター」の、彼女なりの描き直しである。

秘密の組織に追われる超能力を持った少女。
使い古された設定だが、70年代のSF映画で育った世代には、逃げられない魅力がある。
それに犬まで付いている。
犬はキングよりクーンツのおハコだが、この組み合わせは強力である。

秘密組織の中で、自らの父親の手によって遺伝子操作による強化を受けた少女は、父親と共に組織を脱走し、逃亡の生活を送る。
彼女が登場するまでの第1部は、予想外のトリックがあってなかなか面白い。
彼女をかくまっていた孤児院のような施設が、組織の襲撃を受ける第2部も、意外な展開があり、私は一番気に入っている。
舞台がアメリカに移り、第3部はスケールアップする。
肉親やミュータントが登場し、派手なアクションもある。
しかし、仕掛けとしては1部や2部には負けている気がする。

追われる少女と犬というテーマなのに、泣かせる小説ではなかった。
知力・体力ともに常人を凌駕する少女は、11歳にして大人のような思考をする。
そのため、幼い子供になら感じる同情を誘いにくかったのかもしれない。

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