京極夏彦による妖怪ネタを使った仕事人シリーズに「巷説百物語」があった。
この「前巷説百物語」は、「巷説百物語」の主人公の一人である小股潜りの又市が、この稼業に足を踏み入れた若かりし頃の物語である。
「巷説百物語」ではめっきりクールな仕事人だった又市が、この本では回りから、青い青いと言われるのが笑える。
この頃の又市は、何とか人が死なないで損を補填出来ないか真剣に悩んでいる。
この本での仕事人の組織は、損料屋という。
表向きは布団などを貸して、消耗した分を損料として商いをしている。
裏では、頼まれれば人生の損を埋めるのを生業としている。
単に悪人を殺せば良いというわけではなく、うまく納めるために妖怪を使った狂言芝居をうち、世間を煙に巻く。
久しぶりに京極夏彦を読んだが、やはり面白い。
時代劇らしい言葉使いと、果てしないウンチクを読んでいると、日本人で良かったと思う。
仕事人の仲間も個性豊かである。
そのうちの一人である浪人は、自分の刀は持たず、相手の武器を奪って倒す。
だから、相手が武器を持っていないと、逆に困ってしまう。
仕事人同士の壮絶な戦いという、お約束の見せ場もある。
本編、後、前と来たので、打ち止めだろうか。
残念だ。
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