「バッテリー」のあさのあつこによるデストピア小説である。
危うく存在を忘れるところだったが、やっと5巻の文庫版が出版された。
何にしても、刊行ペースが遅過ぎる。
人類の一部が満たされたユートピアで生活しているが、その外には生きるのも精一杯の生活があり、ユートピアも崩壊の危機に瀕している、という設定はありふれている。
しかし、そこは「バッテリー」のあさのあつこである。
登場する少年達の内面の描き方がとても巧い。
ユートピアを追われた主人公・紫苑と謎の悪党・ネズミの、ホモセクシャルを匂わせる関係が、危うさ満点に描かれている。
あさのあつこは、少年を描かせると、本当に面白い。
しかし、刊行ペースと展開が遅い。
今回は、ユートピアに生活していた時代の紫苑のガールフレンド・沙布が当局に拉致されたので、助けるために紫苑とネズミが地獄の矯正施設に潜入する話である。
しかし、紫苑の母、紫苑とネズミ、ネズミの友人のイヌカシの視点で各章が描かれているのもあって、なかなか話が進まない。
グインサーガの栗本薫を思い出してしまった。
頼むから、刊行ペースかストーリー展開を早くしてくれ!
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