たった一人のエースを勝たせるために、チームメンバーが犠牲になるロードレースでのミステリー。
読了後、生贄の意味が重く響く。

ロードレースは日本では、まだまだマイナーなスポーツである。
今年は、ツール・ド・フランスに日本人が２人も出場したのに、あまり報道されず、一般の認知度は低い。

また、とても特殊なスポーツでもある。
チームが一丸となって、エースの優勝をサポートするのだ。
エース以外のメンバーは、エースをサポートする風除けであり、捨て駒である。
エースの優勝は、すなわちチームの優勝だが、記録としてはエースの名前しか残らない。
極めて階級のはっきりしたスポーツであり、そこには平等など欠片もない。

そのロードレースを舞台にした小説だから、サクリファイス（生贄）とは、アシストするメンバーのことだと思った。
主人公は、陸上選手として勝利へのプレッシャーに疲れ、自転車レースの世界でアシストに生きがいを見出す変わった人物である。
その主人公の視点で、ロードレースが描かれる。
元々アシスト志望なのだから、主人公側から見ると、エースの犠牲になる悲壮感はない。

途中までは、よくあるスポーツ小説なのだが、終盤で一気にミステリーとなる。
なぜ事故が起こったのか？
事件の犯人と動機が二転三転する。
誰が、何のための生贄だったのか？
悲しくもあり、爽やかでもある結末である。

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