ヘリックスの孤児

ヘリックスの孤児 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-9) (ハヤカワ文庫SF)様々な分野を器用にこなすダン・シモンズの短編集である。
彼の作品は、とても面白いものと、全然わからないものに分かれる。
この短編集でも、その比率は大体半々だった。

「ハイペリオン」で現代SFを代表する作家となったダン・シモンズだが、デビュー作の「カーリーの歌」は、ダークファンタジーの傑作だった。
それ以外でも、いろいろな分野での小説で受賞している、評価の高い作家である。
しかし、私にとっては、大きな当たりとはずれがある作家である。

この短編集では、「ケリー・ダールを探して」「アヴの月、九月」「重力の終わり」は、何を描きたいのかわからなかった。

「ヘリックスの孤児」は、ハイペリオン・シリーズの短編である。
植民星を探す宇宙船が、救難信号に気づき、ある惑星に立ち寄ることになる。
そこには、惑星軌道大の巨大なリングに住む人類の末裔が住んでいた。
彼らは、宇宙空間でも生きられるように進化しており、太陽光を羽根に受けて、宇宙空間を移動する。
彼らの都市を数十年ごとに、巨大なロボット宇宙船が襲来し、人間ごと資源を収穫していくのだ。

物理学だけでなく、生物学や政治、宗教を踏まえた現代的SFである。
ただ、ハイペリオンを読んでいないと、背景がわかりづらいかもしれない。

人類の3つの種が絡むのだが、それぞれがあまり好戦的でないのが良い。
宇宙船をコントロールするAI達が、日本の古典的有名人なのが微笑ましい。

「カナカレンデスとK2に登る」
カマキリ型宇宙人を連れて、K2を登る話である。
宇宙人こそ居るが、普通に山の話である。
8,000mを越えるデス・ゾーンでの苦闘がよく描かれている。
カマキリ型宇宙人もいい奴だし、本短編集中で一番のお気に入りだ。

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