沙門空海唐の国にて鬼と宴す

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一夢枕獏の作品だから、中国に渡った空海が、唐の妖怪と壮絶なバトルを繰り広げる!のかと思ったら、少し違った。
どちらかというと、「陰陽師」のようなティストであった。
舞台が中国だけに、スケールはもっと大きい。

「密」を盗みに中国に渡った空海が、長安で怪しい陰謀に巻き込まれる。
この小説の中で空海は、中国にわたってすぐに現地の言葉を操り、卓越した知識と書の才能を持ち、何事にも動じない、スーパーマンのような坊主として描かれている。
儒教を学ぶために空海とともに中国に渡り、常に行動をともにする橘のボケ役でうまくバランスを取っている。
この辺りも「陰陽師」に近い。

1冊ごとに話が終わると思ったら、1巻では何も解決しなかった。
2巻でも話は終わらなかった。
それどころか、話は楊貴妃の伝説まで広がり、どんどんスケールが大きくなっていく。
そんなに面白いというわけではないが、ここまで来たら、最後まで付き合うしかないだろう。

面白いのは空海が中国に渡ったころの長安である。
日本人だけでなく、ペルシャやインド、アラビアなど、世界中の人間が訪れる国際都市だったらしい。
人口の1%は外国人だったようだ。
様々な異教が入ってきても迫害することがなく、試験の成績さえよければ、外国人でも問題なく政府の高官になれるオープンさだった。
現代とは随分違う。
映像化したら、面白い風景だろう。

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