WORLD WAR Z

WORLD WAR Z「高慢と偏見とゾンビ」に続く、今年度ゾンビ祭り第2弾!

今度は戦争だ!
ビックリすることに、ゾンビVS人間全面戦争というマヌケな小説が、とても面白かった。

これは傑作かもしれない。

中国から蔓延したウィルスは死者を蘇らせ、蘇った死者は人間を襲い始めた。
定番とも言える設定である。
しかし、この作者は、地球規模のゾンビVS人間の全面戦争を、様々な視点でドキュメンタリータッチに描いていく。
ホラーではなく、戦争小説に近い。
作中のアメリカ人将校が言っているが、アメリカだけでも「敵は2億のゾンビ」なのである。

ゾンビの発生、蔓延、人間の反撃、勝利を世界中の人々視点で描いている。
中国の医師、チベットの密入国業者、ギリシャの軍人、ブラジルの違法臓器移植医師、西インド諸島の少年、イスラエルの政治家などが当時の状況を語る。
短編にすると数十編分のアイディアとストーリーが盛り込まれている。

戦争の開始時点では、ゾンビに襲われるよりも、パニックや腐敗した政治家・官僚による誤った判断、人間同士の略奪で死ぬ人の方が多かった。
疲弊した軍事力では、すべての市民は守れないという事実を受け入れることによって、何とか人類絶滅は回避出来た。

「歴史上、はじめてわれわれは掛け値なしの全面戦争を繰り広げる敵に直面していた。
やつらには忍耐の限界は存在しない。
交渉の余地はなく、降伏の2文字もない。
やつらは最後の最後まで戦闘を続けるだろう。
人間とはちがって、文字通り一人残らず、いついかなる瞬間であれ、地上の全生命を喰らい尽くすという使命に全身全霊を捧げているのだから。
ロッキー山脈の向こうで待ちかまえているのはそういう敵だった。
われわれが開始しようとしているのはそんな戦争だった」

そして、人類の反撃が始まる。
敵がゾンビなので、人間側にモラル的な引け目がなく、全面的に爽快な戦争小説になっている。
ゾンビ小説で感動するとは思わなかった。

「マーティンは別な面を示そうと決意した。
翌朝、目覚めたときに寝床から起きだそうという気にさせる面、大丈夫というメッセージを与え、見る者の心に石にかじりついてでも生きのびなければならないという気持ちをかきたてるような面。
この手の嘘にどういう名前がつけられているか知ってるか?
「希望」というんだよ」

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