蒼路の旅人

蒼路の旅人 (新潮文庫)上橋菜穂子の「旅人」シリーズ第6作。
今回は皇太子チャグムが主人公で、バルサは登場しない。
この巻を読んで、このシリーズが日本の誇るファンタジーだと実感した。
大国との開戦を目前にし、戦記モノになってきた。

「旅人」シリーズは、架空の世界で生きる人々を描くファンタジーシリーズである。
トールキンを想わせる緻密な世界構築で、いままでも好感の持てるシリーズだった。
しかし、民衆に人気があるため父である帝に妬まれ、大国タルシュの侵略を前に苦闘するチャグムの姿を描いた本作を読んで、日本の誇るファンタジーだと思った。

架空の世界ではあるが、そこで生きる人々の生き様がキッチリ描かれている。
チャグムが背負う責任は、あまりに重く、逃げ場がない。
あるのは正義ではなく、それぞれの立場に過ぎず、その時点で可能な道を探さなければならない。
そして、大国との戦争を前にして、時代小説ようなスケール感が出て来た。

このシリーズは文庫で揃えるつもりなのだが、続きが読みたくて仕方ない。
ハードカバー版に手をつけないように自制せねば。

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