ジーンワルツ

ジーン・ワルツ (新潮文庫)海堂尊はやっぱり凄い。
メッセージと物語を両立させる才能は尋常ではない。
今回も体外受精という重いテーマを掲げながら、キッチリとエンターテイメントしている。

今回は医学の魔女による奇跡の物語である。
官僚の失策による医療崩壊の中、不妊治療を、子供の命を守るために戦う女性が主人公である。
意思が強く、口論になれば負けることのない通称クール・ウィッチ曽根崎理恵は、どちらかというと淡々と業務をこなしているように見える。
しかし、最後の最後で、女王として君臨する。
その策略たるや、男性からみると恐ろしい、ほとんど反則である。
子供を守る為には手段を選ばない、古典的な意味での魔女、地母神を想わせる。
現代医学の世界を舞台にした、ファンタジーである。

2進法のデジタルがベースであるコンピュータに対し、3つの遺伝子暗号を元にする生命はワルツである。
なんとも美しい発想である。
このような科学詩人はクラーク以来ではないだろうか。

魔女の友人であり、上司でもあり対立し翻弄される清水のキャラクターが良い。
とても頭が良いのだが、飄々としてこだわりが少なく、その軽さが爽かでさえある。
今後の活躍が楽しみである。

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