スティーヴン・キング復活!
上下巻それぞれ600ページを越える大作を、寝る間も惜しんで読ませる豪腕さ。
この頃めっきり大人の作家になってしまったので、そろそろ見限ろうかと思っていたが、ここに来てまさかの先祖帰り。
どうしようもなく陳腐な設定で、リアルに人間を描き切る手腕は流石である。
メイン州の小さな町が、ある日透明なドームに覆われ、外界から遮断されてしまった。
取り残された町の人々は、次第に恐怖に支配されていく。
しょっぱなからアクセル踏みっぱなしである。
ドームが現れそうな予感などまるで無く、最初の数ページで突然町はドームに覆われ、飛行機や車が透明のドームに激突する。
外部から切り離された町では、法律は無意味となり、恐怖を武器にした独裁が頭をもたげる。
「霧」のスーパーマーケットがひとつの町の規模に拡大し、「スタンド」のような正義と悪の戦いが始まる。
町の有力者に過ぎなかった中古車屋の社長が、だんだんヒットラーのように思えてくる。
独裁国家における秘密警察の恐怖は、町の不良に対する恐怖の延長にあると、リアルに感じさせるところが、キングの上手さだと思う。
なぜドームが現れたのか?
ドームから脱出出来るのか?
主人公たちは勝てるのか?
続きが気になって仕方ない小説である。
オチとしては、「路傍のピクニック」的で、キングにしてはマニアックである。
しかし、最後の最後に、そこで感情を交えてしまうのが、やはりキングだった。
タイヤを酸素ボンベに使うアイデアは秀逸。
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