まず題名が面白い。
この題名の意味するのは、未来視とは統計的にありえない予言をすると言うこと。
コインを投げた結果、表か裏が出る確率をグラフを使って説明するなど、ありえない話を真剣に語っているところが楽しい。
特殊能力を持った男を政府の秘密組織が執拗につけ狙う。
自分の能力に目覚めた男は、元CIAの美人スパイと敵の攻撃を能力でかわしながら逃亡する。
粗筋は古典的だが、テーマの深堀の仕方と表現が独特である。
量子力学とユングの集合無意識を使って未来予測を説明している。
怪しいが魅力的だ。
未来を予測するにではなく、望ましい未来を選択する。
未来の選び方が凄い。
運転している妊婦の携帯に電話をかけて驚かし、衝突事故で破水させる。
連絡を受けた電車の運転手の夫は、早く病院に行く為に規則を無視して電車を早く走らせる。
その結果、主人公の乗っている電車が早く目的の駅に辿り着き、追手に捕まらずにすむ。
バカバカしいけど面白い。
特殊な能力を持った人間は、脳内のエネルギー爆発が癲癇となって現れ、社会適応を困難にしている。
癲癇を抑える薬の副作用で、解離性同一性障害になったと思い込み現実を夢とと見做して行動する主人公は、昔懐かしいフィリップ・ディックのキャラクターのようである。
能力を取得すると、語尾に韻を踏む話し方になってしまうのが文学表現として面白い。
こちらは、ファイアスターターの頃のキングに近いものがある。
これがデビュー作とは、将来が楽しみな作家だ。
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